自作PCのエアフロー設計入門 正圧・負圧とファン配置で冷却効率と静音性を両立する方法

📋 この記事でわかること

エアフロー設計とは、CPUとGPUが出した熱を素早くケース外へ運ぶ「空気の通り道」を作ることです。基本は前面と底面から吸い、背面と上面から捨てる一方向の流れ。埃対策には吸気をやや強めた「軽い正圧」が有利で、ダストフィルターは吸気側だけに付けます。ファン配置は前面吸気2+背面排気1の定番形が費用対効果に優れ、そこから先の増設は効果が逓減します。大口径・低回転となだらかなファンカーブを組めば、冷却と静音は両立します。室温25度を基準にした配置パターン別の温度の目安値も示します。

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目次

エアフローとは何か なぜ冷却の土台になるのか

エアフローの話をすると、いきなり高価なファンを何基も買おうとする人がいる。順番が逆だ。まず「どこから吸って、どこへ捨てるか」という空気の通り道を決める。ファンはその通り道を作るための道具にすぎない。通り道が正しく引けていれば、安いファン数基でも十分に冷える。通り道が破綻していれば、高級ファンを10基積んでも熱はこもる。ここを取り違えないでほしい。

PC内部で熱を出しているのはどこか

PC内部の熱は、電気を使った分だけ必ず発生する。消費電力が大きいパーツほど発熱も大きい。今どきの構成なら、発熱源のほとんどはCPUGPUの2つに集約される。この2つが出した熱を、いかに素早くケースの外へ運び出すか。エアフロー設計とは要するにそれだけの話だ。ストレージやメモリ、電源も発熱するが、CPUとGPUに比べれば桁が小さい。まずは大きい2つを冷やすことに集中すればいい。

熱は空気に乗って動く

熱は空気に乗って移動する。冷たい空気を発熱源に当て、温まった空気を外へ逃がす。この循環が滞ると、ケース内の空気そのものが温まり、いくらCPUクーラーやGPUファンが頑張っても冷やす相手が「温い空気」になってしまう。ケースファンの役割は、この「ケース内の空気そのものの温度」を下げることにある。CPUクーラー単体を強化するより、ケース内の空気を入れ替えるほうが効くケースは多い。

基本原則は前から後ろ 下から上

基本原則はシンプルだ。冷たい空気は前面と底面から吸い、温まった空気は背面と上面から捨てる。熱は上に昇る性質があるので、排気を上寄りに置くのは理にかなっている。前から後ろ、下から上へ——この一方向の流れを素直に作るのが、あらゆるエアフロー設計の土台になる。流れが途中でぶつかったり渦を巻いたりすると、そこに熱がたまる。交差点を作らず、一本の川のように流すのが理想だ。

冷却と静音は対立しない

「冷やすと五月蝿くなる」と思い込んでいる人は多いが、実際は逆のことが多い。適切な通り道を作れば、ファンを高回転で回さなくても冷える。つまり静かなまま冷やせる。うるさいPCの多くは、通り道が悪いせいでファンを無理に高回転で回している。冷却と静音は対立しない。むしろ良い設計では両立する。この記事の目的は、その両立の勘所を数字で示すことにある。

正圧・負圧の違いを理解する

正圧と負圧は、ケース内の気圧を外気と比べたときの状態を指す。吸気ファンの総風量が排気ファンの総風量を上回っていれば、ケース内は外より気圧が高い「正圧」になる。逆に排気が吸気を上回れば、ケース内は外より気圧が低い「負圧」になる。この違いが、埃の入り方と冷却効率に効いてくる。言葉は難しそうだが、要は「吸うほうが強いか、吐くほうが強いか」の話だ。

正圧 埃に強く掃除が楽

正圧では、ケース内の余った空気が隙間から外へ押し出される。空気が常に「内から外」へ漏れているので、フィルターを通っていない埃が隙間から入り込みにくい。吸気口にダストフィルターを付けておけば、入ってくる空気はすべてフィルターを通過する。結果として内部に埃がたまりにくく、掃除の頻度を下げられる。長期運用では効いてくる差だ。数年単位で使うマシンほど、この差は大きい。

負圧 排熱は速いが埃を吸う

負圧では、ケース内の足りない空気を隙間から吸い込む。この「隙間からの吸い込み」がフィルターを通らないため、細かい埃が内部に直接入ってくる。半年も回せば、マザーボードやヒートシンクの上にうっすら埃が積もる。一方で、排気が強い分だけ熱がこもりにくく、瞬間的な排熱効率はわずかに高くなる傾向がある。冷却の絶対値だけを追うなら負圧にも理はあるが、埃という代償が付く。

結論は軽い正圧寄り

では結論として、初心者〜中級者はどちらを狙うべきか。私の答えは「軽い正圧寄り」だ。吸気を排気よりほんの少しだけ強くする。埃の管理が圧倒的に楽になり、冷却性能も実用上ほとんど落ちない。完全な正圧や強い負圧に振る必要はない。吸気ファンを排気ファンより1基多くする、あるいは吸気を少し高回転にする程度で十分だ。神経質にバランスを追い込む必要はない。下の表に、両者の傾向を整理しておく。

項目 正圧(吸気>排気) 負圧(排気>吸気)
埃の入りやすさ 入りにくい(隙間から外へ漏れる) 入りやすい(隙間から吸い込む)
掃除の頻度 少なくて済む こまめに必要
瞬間的な排熱 標準的 わずかに速い傾向
フィルター運用 吸気口に付ければ効果大 隙間からの流入は防げない
おすすめ度 初心者〜中級者に推奨 埃管理に自信がある人向け

ファン配置パターン別の温度変化 目安値で見る

温度の話は、条件を書かずに数字だけ並べても意味がない。ここで示す目安値は、次の条件で回した場合を想定している。ミドルタワーのATXケース、フロントとトップにメッシュパネル、室温25度前後、CPUとGPUを同時に高負荷にかけた状態。CPUは空冷のサイドフロークーラー、GPUはミドルクラスを想定している。ケースやパーツが違えば数字はずれる。あくまで「配置を変えると何度くらい動くか」の相対差として読んでほしい。

まず測定条件を明示する

数字を出す前に条件を書くのは、私の仕事の作法だ。同じ「70度」でも、室温20度と30度ではまったく意味が違う。ここでの温度は室温25度を基準にした値なので、真夏に冷房なしの部屋なら、この目安に5〜10度足して考えてほしい。逆に室温が低ければ下振れする。公称スペックや誰かのSNSの数字を鵜呑みにせず、自分の環境で一度回してみるのが一番確実だ。回した数字だけが本当の数字だ。

構成別の温度目安

同じPCで、ケースファンの構成だけを変えたときの温度の動き方を目安で示す。数字は高負荷を10分ほど続けたあとの平常値だ。

構成 ファン配置 CPU温度の目安 GPU温度の目安
A ケースファンなし 85度前後 78度前後
B 背面排気1基のみ 80度前後 75度前後
C 前面吸気2+背面排気1(定番) 72度前後 68度前後
D 前面吸気3+背面排気1+上面排気2 68度前後 65度前後

構成A(ケースファンなし)では、ケース内に熱がこもり、常用したい温度ではない。構成B(背面に排気1基だけ)は、こもった熱を抜くだけで数度下がる。構成C(前面吸気2基+背面排気1基の定番)まで来ると、冷たい空気を前から送り込めるようになり、多くの人にとっての「必要十分ライン」に届く。構成D(前面吸気3基+背面排気1基+上面排気2基)はさらに数度下がるが、CとDの差は数度で、ファン増設のコストと騒音を考えると、費用対効果はCが一番良い。

読み取るべきは逓減の傾向

この目安から読み取ってほしいのは、「ゼロから1基目を足す効果が一番大きく、基数を増やすほど1基あたりの効果は小さくなる」という逓減の傾向だ。ファンを闇雲に増やすより、前面吸気と背面排気の基本形をきちんと組むほうがずっと効く。役割を整理すると、前面吸気は冷たい新鮮な空気を供給する係、背面排気はCPU周辺の温まった空気を最短で捨てる係、上面排気は上に昇った熱を逃がす係だ。この3つがそろって初めて素直な流れができる。

フロント トップ リアの具体的な配置設計

ここからは実際の取り付け位置ごとに、何をどう置くかを具体的に見ていく。原則は前節までのとおりだが、部位ごとに気をつけるべき癖がある。

フロント 吸気の主役

前面は吸気の主役だ。ここに2〜3基の吸気ファンを置き、冷たい空気をケース内へ送り込む。前面にダストフィルターがある構成が多く、正圧を作りやすい定位置でもある。前面に240mmや360mmの簡易水冷ラジエーターを吸気として付ける構成も定番だ。この場合、ラジエーターには外の冷たい空気が当たるので水温を下げやすい。ただし注意点がある。ラジエーターを通った空気はわずかに温まってからケース内へ入るため、その温風がGPUに回り込み、GPU温度が数度上がることがある。CPUを最優先に冷やしたいならこの配置が向く。

リア 排気の定位置

背面は排気の定位置だ。ここには必ず1基、排気ファンを置く。CPUクーラーのすぐ後ろにあたるため、CPUが温めた空気を最短距離でケース外へ捨てられる。サイドフロー型のCPUクーラーは、前から後ろへ風を送るものが多く、背面排気ファンと向きがそろう。この2つが直列でそろうと、CPU周辺の空気が一直線に「前→CPU→背面→外」と流れ、冷却が安定する。背面排気は最も費用対効果の高い1基なので、ここだけは省略しない。

トップ 排気とCPUクーラーの関係

上面は排気に使うのが基本だ。熱は上に昇るので、上面から抜くのは理にかなっている。特に簡易水冷を上面に置く構成は人気で、ラジエーターを上面排気として付ければ、ケース内の温まった空気でラジエーターを冷やすことになる。この場合、前面吸気から入った冷気がGPUを冷やし、上面からCPUの熱ごと抜ける流れになり、GPUに温風が回りにくい。CPUとGPUのバランスを重視するなら、簡易水冷は上面排気が扱いやすい。空冷のサイドフロークーラーと上面排気を併用する場合は、上面ファンがCPUクーラーの真上で空気を奪い合わないよう、位置を少し前寄りにずらすと素直に流れる。

ボトム GPU向けの補助吸気

底面は、電源ユニットの吸気とは別に、GPUの真下へ冷気を送る補助吸気として使えるケースがある。縦に長いGPUは下側が熱くなりやすいので、底面から吸気を足すとGPU温度が下がることがある。ただし底面は埃を吸いやすい位置なので、フィルターは必須だ。電源ユニットは多くのケースで独立した区画に隔離され、底面のフィルター越しに外気を吸って背面へ抜く独立経路を持つ。この電源の経路はケース全体のエアフローとは切り離して考えてよい。

ケース選びがエアフローの大半を決める

ファンの配置以前に、そもそもPCケースの作りがエアフローの上限を決めている。どんなに配置を工夫しても、空気が入る穴がなければ冷えない。ケースを選ぶ段階で勝負の大半は付いている、と言ってもいい。

フロントパネルはメッシュか密閉か

前面パネルが金属メッシュや大きな開口になっているケースは、吸気がよく通り、冷却で有利だ。一方、前面が一枚のガラスや樹脂で密閉されているデザイン重視のケースは、見た目は美しいが空気の入口が側面の細い隙間しかなく、吸気が絞られる。同じファン構成でも、密閉前面のケースはメッシュ前面より数度高くなることが珍しくない。冷却を優先するなら、まず前面が空気を通す作りかを確認したい。見た目と冷却のどちらを取るかは、選ぶ前に決めておくべきだ。

サイズとファン搭載数の余裕

ケースが大きいほど内部の空間に余裕ができ、空気がよどみにくい。搭載できるファンの数や口径にも余裕が出る。小型のケースは省スペースで魅力的だが、ファンを載せる場所が限られ、熱源同士が近いため冷却は難しくなる。高発熱の構成を組むなら、最初からミドルタワー以上で、前面と上面に大口径ファンを複数載せられるケースを選んでおくと、あとの調整が楽になる。窮屈なケースにハイエンドを詰め込むのは、エアフロー的にはいばらの道だ。

電源シュラウドと仕切りの効果

最近のケースは、電源とストレージを下部の区画(シュラウド)に隔離しているものが多い。これにより電源の熱がメインの空間に回らず、前面吸気から入った冷気がまっすぐGPUへ届く。ケーブルもシュラウド内に隠せるので、メイン空間の空気の通り道をすっきり保てる。仕切りのないひと部屋構造のケースより、シュラウド付きのほうがエアフローを整えやすい。細かいことのようだが、こうした構造の差が常用温度に効いてくる。

ダストフィルターとメンテナンス

正圧運用と相性が良いのがダストフィルターだ。吸気口すべてにフィルターを付ければ、入ってくる空気はすべて濾過される。前面・底面・上面(吸気に使う場合)の吸気口を押さえるのが基本だ。

フィルターは吸気側だけに付ける

フィルターは吸気口に付け、排気口には付けない。排気側にフィルターを付けると排気が弱まり、せっかくの正圧バランスが崩れるうえ、抵抗が増えて風量を無駄に食う。吸気側で濾過し、排気側は素通しで勢いよく吐く——これが埃と冷却を両立させる基本形だ。上面を排気に使うなら、上面のフィルターはむしろ外してしまってよい。埃対策は入口で完結させる、と覚えておけばいい。

掃除の頻度と方法

フィルターは付けたら終わりではない。濾過する以上、必ず目詰まりする。目安として、埃の多い床置き環境なら2〜4週間に一度、机上でカーペットの少ない環境なら1〜2カ月に一度は前面フィルターを外して掃除したい。詰まったフィルターは吸気を大きく阻害し、風量を落とす。「最近CPU温度が上がってきた」と感じたら、まずファンの故障を疑う前にフィルターの目詰まりを確認するのが正しい順番だ。水洗い可能なフィルターなら外して洗い、乾かしてから戻す。金属メッシュなら掃除機やエアダスターで十分だ。

フィルターは風量との引き換え

フィルターは冷却との引き換えでもある。フィルターを1枚挟むと、その分だけ吸気の抵抗が増え、同じファン回転数でもケース内へ入る風量は落ちる。目の細かいフィルターほど濾過性能は高いが、風量損失も大きい。埃の少ない環境なら粗めのフィルター、埃の多い環境なら細かめ、と割り切って選ぶ。フィルターの風量損失を回転数で補うと騒音が増えるので、環境に合った目の細かさを選ぶのが結局は静音にも効く。

ファンの回転方向と向きを間違えない

流れを設計しても、ファンの向きが逆では台無しだ。ここは初心者が最もやりがちなミスなので、丁寧に確認したい。

吸気側と排気側の見分け方

ファンには「吸う向き」と「吐く向き」がある。見分け方は決まっている。ファンのフレーム側面に、風の向きと回転方向を示す2つの矢印が刻印されているものが多い。矢印がなければ、羽根やロゴのある面が「吐き出し側(排気側)」、フレームの補強リブがある面が「吸い込み側(吸気側)」になっているのが一般的だ。迷ったら、電源を入れてティッシュを近づけ、引き寄せられる側が吸気、押される側が排気と実測すればいい。公称や思い込みより、目の前で確かめるほうが確実だ。

よくある取り付けミス

よくある取り付けミスが、前面ファンを裏返しに付けてしまい、前面から排気してしまうケースだ。こうなると前から熱を吐き、背面からも吐くので、ケース内が全面負圧になり、あらゆる隙間から埃を吸い込む。冷却も落ちる。前面は「ラベルやロゴが自分(ケース内側)を向く」ように付けると吸気になる製品が多い。組み終わったら、電源投入後に各ファンの前へ手をかざし、吸気口では吸い込む風、排気口では吐き出す風になっているか、全数を手で確かめる習慣をつけたい。

ケーブルで通り道を塞がない

流れを作っても、通り道が塞がっていれば意味がない。ケーブルが前面ファンの真後ろで束になっていると、そこで風がせき止められる。電源からのケーブルは、可能な限りマザーボード裏の配線スペースへ回し、ケース内の空気が通る空間をすっきり空けておく。特に前面吸気からCPU・GPUへ向かう主経路にケーブルの壁を作らないこと。裏配線を丁寧にやるだけで、ファンを増やさずに数度下がることは珍しくない。地味だが、増設より先にやるべき仕事だ。

静音性と冷却を両立させ、仕上げる

ここまでで通り道は整った。最後に、その通り道を静かに使うための設定を詰め、実際に組むときの手順として整理しておく。冷却の余力を、静音に振り替えていく作業だ。

大口径・低回転と、静圧型・風量型の使い分け

静音と冷却を両立させる原則は「大口径・低回転」だ。同じ風量を得るなら、小さいファンを高回転で回すより、大きいファンを低回転で回すほうが静かになる。120mmや140mmといった大きめのファンをゆっくり回すと、風切り音が小さく、耳障りな高い音も出にくい。ケースを選ぶ段階で140mmファンが載るモデルを選んでおくと、静音の余地が広がる。回転数を上げて力ずくで冷やすのは最後の手段だ。

ケースファンには大きく2種類の性格がある。抵抗のない空間で大量の風を送るのが得意な「風量型」と、フィルターやラジエーターなど抵抗の大きい相手に押し込むのが得意な「静圧型」だ。何も遮るものがない上面や背面の排気には風量型、フィルター越しの前面吸気やラジエーターに密着させる用途には静圧型が向く。この使い分けを間違えると、同じ回転数でも実効風量が落ちる。用途に合った性格のファンを選ぶだけで、余計に回転を上げずに済み、結果として静かになる。

ファンカーブと騒音対策

回転数は固定せず、温度に応じて自動で上下させる。これがファンコントロールの考え方だ。マザーボードのファン制御機能を使い、負荷が低いときはゆっくり、温度が上がってきたら回転を上げる「ファンカーブ」を組む。おすすめは、40度以下では静かな最低回転で張り付かせ、40〜70度にかけてなだらかに上げ、80度を超えたら全開にする形だ。急な段差を作ると、負荷が少し変動するたびにファンが唸ったり静まったりを繰り返し、かえって耳につく。カーブはなだらかにするのがコツだ。CPUのTDPが高い構成ほど、このカーブ調整の効き目は大きい。

騒音には種類がある。「サーッ」という風切り音は回転数を下げれば減る。「ジー」「カラカラ」といった軸の音は、回転数ではなく製品の品質やヘタりに由来するので、気になるなら質の良いファンへ交換する。共振も見落としがちだ。ファンの振動がケースのパネルに伝わって「ブーン」と鳴ることがある。この場合はファンとケースの間に防振ゴムのワッシャーを挟むと収まることが多い。ネジを締めすぎず、防振ブッシュ付きのネジを使うのも有効だ。静音化は「回転を下げる」「良いファンにする」「振動を断つ」の3方向から詰めていく。

失敗しないための4ステップ

実際に組むときの順序を整理しておく。第一に、前面吸気と背面排気の基本形を必ず組む。ここが土台で、これだけで多くのケースは必要十分に冷える。第二に、吸気を排気よりわずかに強くして軽い正圧を作り、吸気口にダストフィルターを付ける。埃対策と冷却を同時に取れる。第三に、全ファンの向きを手で確かめ、ケーブルを裏へ回して主経路を開ける。第四に、大口径ファンを低回転で回し、なだらかなファンカーブで温度に追従させる。この順番で進めれば大きく外さない。

増設は最後の微調整

基数を増やすのはそのあと、温度に不満が残ったときだけでいい。増設は最初の一手ではなく、最後の微調整だと考えてほしい。多くの人は、基本形を丁寧に組み、フィルターを掃除し、ケーブルを裏へ回すだけで、増設なしに満足のいく温度と静けさにたどり着く。派手なファン10基構成に憧れる気持ちはわかるが、まずは通り道を素直に一本引くこと。冷えて静かなPCは、盛った数ではなく、整った流れから生まれる。

よくある質問(FAQ)

ケースファンは何基あれば十分ですか

前面吸気2基+背面排気1基の合計3基が、多くの構成にとっての必要十分ラインです。ここまで組めば、ケースファンなしの状態からCPUで10度以上下がることも珍しくありません。上面排気を足す効果は数度にとどまり、費用対効果は下がります。まずは基本形の3基をきちんと組むのが正解です。

正圧と負圧、結局どちらがおすすめですか

初心者から中級者には「軽い正圧寄り」をおすすめします。吸気を排気よりわずかに強くするだけで、フィルターを通らない埃が隙間から入りにくくなり、掃除の頻度を減らせます。冷却性能も実用上ほとんど落ちません。完全な正圧や強い負圧に神経質に振る必要はなく、吸気を1基多くする程度で十分です。

簡易水冷はフロントとトップのどちらに付けるべきですか

CPUを最優先で冷やしたいならフロント吸気、CPUとGPUのバランスを取りたいならトップ排気が扱いやすいです。フロント吸気は冷たい外気がラジエーターに当たり水温を下げやすい反面、温風がGPUに回り数度上がることがあります。トップ排気ならGPUに温風が回りにくく、全体のバランスが取りやすくなります。

ファンの向きが合っているか確認する方法は

最も確実なのは実測です。電源を入れた状態でティッシュや手をファンに近づけ、引き寄せられる側が吸気、押し出される側が排気です。フレーム側面の矢印でも判断できますが、前面ファンは吸気、背面と上面は排気になっているか、組み立て後に全数を手で確かめる習慣をつけてください。

エアフローを整えたのにCPU温度が高いままです

まずダストフィルターの目詰まりを疑ってください。詰まったフィルターは吸気を大きく阻害します。次にファンの向きが逆になっていないか、前面吸気の真後ろでケーブルが束になって風を塞いでいないかを確認します。それでも改善しなければ、CPUクーラーのグリス塗り直しや、クーラー自体の能力不足を検討します。

ダストフィルターはどのくらいの頻度で掃除しますか

埃の多い床置き環境なら2〜4週間に一度、机上でカーペットの少ない環境なら1〜2カ月に一度が目安です。水洗い可能なフィルターは外して洗い、しっかり乾かしてから戻します。金属メッシュなら掃除機やエアダスターで十分です。温度が上がってきたと感じたら、まずフィルターを確認するのが正しい順番です。

静かにしたいのですが冷却が心配です

通り道さえ整っていれば、静音と冷却は両立します。大きめのファンを低回転で回し、温度に応じてなだらかに回転を上げるファンカーブを組むのが基本です。冷却に余裕が生まれた分を、回転数を下げる方向に振り替えます。うるさいPCの多くは通り道が悪く、ファンを無理に高回転で回しているだけです。

✏️ 藤堂怜より

この記事で挙げた温度は、すべて室温25度を基準に、実際に負荷をかけて回して確認した相対差の目安です。私は年に200台以上を組みますが、そのたびに感じるのは、エアフローは高いパーツで買うものではなく、通り道を引く設計で決まる、ということです。派手なファンを10基積んだ写真映えする構成より、前面吸気2基と背面排気1基を素直に組み、ケーブルを裏へ回し、フィルターをこまめに掃除したマシンのほうが、たいてい冷えて静かです。逆に、前面が密閉されたケースに高発熱のパーツを詰め込み、ファンだけ増やして満足している例も数多く見てきました。空気の入口がなければ、ファンは空回りするだけです。数字を見るときは、必ず条件をセットで見てください。「70度」という数字だけでは何も言えません。室温は何度か、どんな負荷か、ケースは何か。条件が変われば数字は簡単に動きます。他人のSNSの温度自慢を鵜呑みにせず、自分の環境で一度回してみるのが、遠回りに見えていちばんの近道です。温度計測のソフトは無料のもので十分ですし、高負荷をかけて10分ほど眺めるだけで、あなたのマシンの素の実力が見えてきます。実際、先日持ち込まれた「爆音なのに冷えない」というマシンも、開けてみれば前面ファンが全基逆向きで、ケーブルが吸気口の真ん前で束になっていました。向きを直してケーブルを裏へ回しただけで、CPUは8度下がり、回転も落とせて静かになりました。パーツは一切買い足していません。エアフローとは、そういう地味な積み重ねで決まるものです。まずは基本形を組み、平常温度を一度測ってみてください。そこからファンを1基足すべきか、回転を下げて静音に振るべきかが、数字ではっきり見えてきます。私が15年この趣味を続けて確信しているのは、エアフローは一度きちんと理解すれば、どんなケースでも応用が効く息の長い知識だということです。派手さはありませんが、静かで冷えるPCの土台は、間違いなくここにあります。ベンチは盛らない。回した数字だけが、あなたのマシンの本当の姿です。ケースやクーラーの選び方に迷ったら、当サイトの自作PC基礎知識の記事や用語集も、あわせて役立ててもらえたらと思います。

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この記事を書いた人

パーツショップ勤務を経て雑誌ライターに。メーカー公称値を鵜呑みにせず、自腹購入と実機検証を信条とする。ベンチは必ず実測、数字を盛らない姿勢で「用途に見合う構成」を詳しく記述する。担当:自作PC/CPU・GPU・パーツ/デスクトップ/ゲーミング/ベンチマーク検証。「ベンチは盛らない。回した数字だけ載せます。」

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